送り出し教育とは?義務なのか・誰がやるのか・報告書の書き方まで解説

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送り出し教育は義務?誰がやる?

安全書類の担当になると、必ず一度はぶつかる疑問です。
この記事では、法令の条文までさかのぼって、義務なのか・誰がやるのか・何を教えるのか・報告書に何を書くのかを整理します。

つかだ

結論から言うと「送り出し教育」という名前は条文はありません。
でも、法的根拠により実施する必要があります!

目次

送り出し教育とは

送り出し教育とは、作業員を現場に送り出す側の会社(協力会社=雇用主)が、現場に入る前に自社で行う安全衛生教育のことです。

これから入る現場がどんな場所で、どんな危険があり、どんなルールがあるのかを、現場に着く前に本人へ伝えておくのが目的です。

よく混同されるのが「新規入場者教育(受入教育)」です。こちらは元請が、現場で、入場したその日に行う教育です。2つはまったく別の教育で、実施する会社もタイミングも違います。

送り出し教育と新規入場者教育(受入教育)の関係を比較した図。送り出し教育は協力会社(雇用主)が自社の事務所などで、現場に入る前に、現場の危険を事前に知らせるために行う。新規入場者教育は元請が現場で、入場したその日に、現場のルールを守らせるために行う。元請には、協力会社が送り出し教育をするための「場所」と「資料」を提供する義務がある。下部に「『送り出し教育』という名前の条文はありません。中身が第59条の義務にあたります」と記載
送り出し教育新規入場者教育(受入教育)
実施するのは協力会社(雇用主)元請
場所自社の事務所など現場
タイミング現場に入る前入場したその日
目的現場の危険を事前に知らせる現場のルールを守らせる
おもな根拠労働安全衛生法 第59条第2項
労働安全衛生規則 第35条
労働安全衛生法 第30条第1項第4号
労働安全衛生規則 第642条の3

送り出し教育は”義務”なのか?

「送り出し教育」という名前の義務を定めた条文はありません。
ただし、その中身は労働安全衛生法上の義務にあたります。

つかだ

「送り出し教育」は法令用語ではなく、建設業界の実務のなかで定着した呼び名です。教育時間も様式も、法令では決められていません。

では、なぜやらなければいけないのか。根拠は次の条文です。

根拠①:労働安全衛生法 第59条(安全衛生教育)

事業者は、労働者を雇い入れたときは、当該労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、その従事する業務に関する安全又は衛生のための教育を行なわなければならない。

2 前項の規定は、労働者の作業内容を変更したときについて準用する。

労働安全衛生法 第59条

注目してほしいのは第2項です。「作業内容を変更したとき」にも教育の義務が準用されます。

建設業では、現場が変われば作業内容も変わります。扱う機械も、周囲の状況も、危険の種類も違う。
つまり新しい現場に送り出すことは、多くの場合この「作業内容の変更」にあたります。
だから雇用主である協力会社に教育義務が生じるという構造です。

つかだ

「新しい現場に入場する」ことは、
「労働者の作業内容の変更」に該当するという解釈ですね!

根拠②:労働安全衛生規則 第35条(雇入れ時等の教育)

第59条を受けて、具体的に何を教えるかを定めているのが安衛則第35条です。8つの項目が挙げられています。

  • 機械等、原材料等の危険性又は有害性及びこれらの取扱い方法に関すること
  • 安全装置、有害物抑制装置又は保護具の性能及びこれらの取扱い方法に関すること
  • 作業手順に関すること
  • 作業開始時の点検に関すること
  • 当該業務に関して発生するおそれのある疾病の原因及び予防に関すること
  • 整理、整頓及び清潔の保持に関すること
  • 事故時等における応急措置及び退避に関すること
  • 前各号に掲げるもののほか、当該業務に関する安全又は衛生のために必要な事項

同条第2項に、「十分な知識及び技能を有していると認められる労働者については、
当該事項についての教育を省略することができる」という規定もあります。

つかだ

「ベテランに毎回ゼロから教える必要はない」ということです。
ただし送り出し教育の要である「現場固有の危険」は省略できません!

根拠③:元請にも義務がある(安衛則 第642条の3)

意外と知られていないのがこちらです。元請の側にも、協力会社の送り出し教育を支える義務があります。

建設業に属する事業を行う特定元方事業者は、(中略)当該場所の状況、当該場所において行われる作業相互の関係等に関し関係請負人が当該関係請負人に係る作業従事者であつて当該場所で新たに作業に従事することとなつたものに対して周知を図ることに資するため、当該関係請負人に対し、当該周知を図るための場所の提供、当該周知を図るために使用する資料の提供等の措置を講じなければならない。ただし、当該特定元方事業者が、自ら当該関係請負人に係る作業従事者に当該場所の状況、作業相互の関係等を周知させるときは、この限りでない。

労働安全衛生規則 第642条の3(周知のための資料の提供等)

かみくだくと、こうなります。

協力会社が新しく入る作業員に現場のことを伝えられるよう、元請は「場所」と「資料」を提供しなければならない。

つまり送り出し教育は、協力会社が勝手にやるものではなく、元請から現場情報をもらって行うものとして法令に組み込まれています。「資料がもらえないので書きようがない」という状況は、本来は起きないはずのものです。

ただし書きにも注目です。元請が自分で作業員に周知するなら、この限りでないとされています。これが新規入場者教育(受入教育)にあたります。2つの教育が条文の中で地続きになっていることが分かります。

実務上は「現場に入る条件」になっている

法令の話とは別に、現実的な理由があります。多くの元請が、送り出し教育の実施報告書の提出を入場の条件にしていることです。

グリーンサイトやBuildeeでは、送り出し教育の実施日を入力し、報告書を提出しないと手続きが進みません。法令上の義務かどうか以前に、出さないと現場に入れないのが実態です。

誰がやるのか

その作業員を雇用している会社(協力会社)です。元請ではありません。

社内で実際に教育を行うのは、次のような立場の人が想定されています。

  • 事業主、または事業主に代わる工事担当者(職長など)
  • 雇用責任者
  • 安全管理者、安全衛生推進者

資格要件は定められていません。実務ではその現場に一緒に入る職長が行うのが最も自然です。現場の状況を把握している人が教えないと、形だけの教育になってしまいます。

二次・三次の協力会社の作業員についても、それぞれの雇用主が自社の作業員に対して行います。一次の協力会社がまとめて全員に行うものではありません。

「送出教育日」とは何の日か

グリーンサイトやBuildeeを触っていると「送出教育日」「送り出し教育実施日」という入力欄が出てきます。

これは実際に送り出し教育を行った日付のことです。提出日でも、入場日でもありません。

ここでよくあるのが、入場日より後の日付を入れてしまうミスです。送り出し教育は「送り出す前」に行うものなので、入場日より前の日付でなければ理屈が合いません。差し戻しの原因になります。

つかだ

元請企業側の場合「送り出し教育いつにしたらいいか」と聞かれます。
送り出し教育を実施した日を書いてもらえれば良いのですが、強いて言えば上記の理屈で入場日より前の日を回答しましょう。

送り出し教育実施報告書には何を書くのか

様式は法令で定められていないため、元請や現場によって書式が違います。
グリーンサイトやBuildeeを使っている現場なら、システム側の様式を使用する場合もあります。

ただ、書く内容はおおむね共通しています。

項目書き方のポイント
工事名・現場名元請から指定された正式名称で。略称は避ける
会社名(所属)作業員を雇用している会社。一次・二次の別も書く欄があることが多い
教育実施日入場日より前の日付。実際に行った日を書く
教育実施者職長など、実際に教育をした人の氏名
対象者(受講者)教育を受けた作業員の氏名。複数人まとめて実施した場合は全員
教育内容チェックリスト形式が多い。実施した項目にチェック
教育時間法令上の定めはないが、記入欄があれば実施した時間を

記入例を探している方へ。書式が現場ごとに違うため、汎用の「正解の記入例」は存在しません。まずは元請から渡された様式、またはグリーンサイト・Buildeeの入力画面を確認してください。項目名が違っても、聞かれていることは上の表とほぼ同じです。

教育内容の欄に何を書くか迷ったら

安衛則第35条の8項目が下敷きになっています。そこにその現場固有の情報を足すイメージです。

  • 工事の概要と、自社が担当する作業の範囲
  • その現場の立入禁止区域・危険箇所
  • 現場のルール(朝礼の時間、KY活動、喫煙場所、駐車場、人と重機の動線など)
  • 使用する機械・工具の危険性と取扱い
  • 保護具の着用ルール(現場によって指定が違う)
  • 事故が起きたときの連絡先と避難経路
  • 健康状態の確認(熱中症対策、持病、服薬の有無など)

元請から渡される現場のルールブックや安全衛生管理計画書が、そのまま教育の材料になります。
これらをもらう権利が、先ほどの安衛則第642条の3です。もらえていないなら、元請に請求してください。

つかだ

これらの送り出し教育に関する法的ルールを、元請会社も熟知しているとは限りません。
本記事を通じて良い認識の共有ができれば私も嬉しいです!

グリーンサイト・Buildeeでの提出方法

実際の入力画面と手順は、それぞれ別の記事にまとめています。
画面のキャプチャ付きで解説しているので、手を動かしながら進めたい方はこちらをどうぞ。

グリーンサイトの場合

実施日の入力と、実施報告書の提出が必要です。受け取る元請側の設定も別途あります。

Buildeeの場合

協力会社管理者と職長で操作できる範囲が違うので、そこも含めて解説しています。

よくある疑問

毎回やらないといけませんか?

現場が変わるたびに必要です。安衛則第35条第2項で一部の項目は省略できますが、省略できるのは「十分な知識及び技能を有していると認められる」項目だけです。その現場固有の危険やルールは、ベテランでも知りようがないので省略できません。

教育時間は何分必要ですか?

法令上の定めはありません。内容を伝えきれる時間であれば、長さは問われません。
ただし報告書に記入欄がある場合は、実際にかかった時間を正直に書いてください。

一人親方はどうなりますか?

安衛法第59条は「事業者が労働者に対して」行う教育なので、雇用関係のない一人親方は条文上の対象外です。
ただし現場の安全という観点では同じ情報を共有する必要があり、元請が報告書の提出を求めるケースは多いです。現場の指示に従ってください。

やらなかったら罰則はありますか?

「送り出し教育をしなかったこと」に対する直接の罰則はありません。ただしその実質である安衛法第59条の教育を怠れば、同法違反になりえます。
それ以上に現実的なのは、事故が起きたときに「教育をしていなかった」事実が安全配慮義務の観点で問われることです。
報告書は、教育をした証拠でもあります。

まとめ

  • 送り出し教育は協力会社(雇用主)が、現場に入る前に、自社で行う安全衛生教育
  • 「送り出し教育」という名前の条文はないが、中身は労働安全衛生法第59条第2項(作業内容変更時の教育)の義務にあたる
  • 教える内容は安衛則第35条の8項目+その現場固有の危険・ルール
  • 元請には「場所」と「資料」を提供する義務がある(安衛則第642条の3)。資料がないなら請求してよい
  • 新規入場者教育(受入教育)は元請が現場で行う別の教育
  • 「送出教育日」は実際に教育を行った日。入場日より前でないと辻褄が合わない
  • 様式は法定されていないので、汎用の記入例は存在しない。元請の様式かシステムの画面に従う
つかだ

「元請から資料をもらう」のはお願いではなく、条文に書かれた権利です。ここを知っているだけで、現場とのやりとりがだいぶ楽になります!

出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生法」/同「労働安全衛生規則」/一般財団法人中小建設業特別教育協会「送り出し教育」
※条文は記事作成時点のものです。教育の運用は現場ごとに異なるため、実際の対応は元請の指示に従ってください。

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